その「サポート」、逆効果になっていませんか?
良かれと思ってしたサポートが、かえって同僚の評価を下げてしまった…そんな経験や場面に遭遇したことはありませんか?プロフェッショナルな現場では、時に「助ける」という行為が、意図せず相手を貶めてしまうことがあります。
先日、ある派遣スタッフの採用面接に立ち会った際、まさにその典型例を目の当たりにしました。営業担当者の一見丁寧な「サポート」が、実は自社が提供する人材という「商品」の価値を根本から否定してしまっていたのです。本記事では、その一部始終と、そこから見えた構造的な問題点を解説します。

- その「サポート」、逆効果になっていませんか?
- 1. 何が起こったのか?面接での一幕
- 2. 構造的な問題点:営業が「自社の商品」を否定する瞬間
- 3. あるべき視点:「商品を売る」から「顧客に受け入れてもらう」へ
- あなたは、自分の「商品」の価値を正しく伝えていますか?
1. 何が起こったのか?面接での一幕
面接に現れたB社の候補者は、人柄は非常に良さそうでしたが、率直に言って、求められるスキルレベルには少し不足しているという印象でした。
問題が起きたのは、質疑応答の時間です。候補者が私たちの質問に答えるたび、同席していた派遣会社の営業担当者が「補足しますと…」「つまり、こういうことです」と、逐一回答を訂正し始めたのです。
営業担当者の意図は、候補者の弱点を先回りしてカバーし、商談を成功させたいという焦りから来たものだったのかもしれません。しかし、その行動は面接官である私たちに強烈な違和感を与えました。「この候補者の回答だけでは不十分だ」と公言しているようなものです。結果として、評価されるべき候補者本人を否定しているという印象だけが残り、候補者の回答そのものの品質が低いように感じられてしまいました。
2. 構造的な問題点:営業が「自社の商品」を否定する瞬間
この状況をビジネスの構造に当てはめて分析してみましょう。今回のケースにおける関係性は、以下のように整理できます。
- 顧客: 派遣スタッフの受け入れ側である、私たち採用企業
- 商品: 派遣される候補者本人
- 営業: 候補者を推薦する派遣会社
この構図において、営業担当者の役割は、顧客に自社の「商品」の価値を伝え、採用を促すことです。しかし、面接での彼の行動は、その役割と完全に矛盾していました。顧客の前で商品の不完全さを必死に補おうとすることで、結果的に「この商品は、私の補足がなければ価値を伝えられない未完成品です」と自ら宣言してしまったのです。
プロの営業とは、完璧な商品を売ることではありません。商品の特性—長所も短所も含めて—を正確に顧客に伝え、その上で「この商品が、あなたのビジネスにどう貢献できるか」を提示することです。今回の行動は、その信頼関係構築の機会を自ら放棄するものでした。
3. あるべき視点:「商品を売る」から「顧客に受け入れてもらう」へ
この経験を通じて、営業担当者に求められるべき視点について深く考えさせられました。彼に欠けていたのは、「商品をどう売るか」という視点ではなく、「顧客がどうすればこの商品を受け入れてくれるか」という視点です。
面接の場で回答を訂正することは、商品の欠点をその場で修理するような最悪の選択です。では、どうすべきだったのでしょうか。
一つは、事前の期待値マネジメントです。例えば、面接前に「Bさんは熟考して回答するタイプなので、即答性は高くないかもしれませんが、その分、一度任された業務は粘り強くやり遂げる信頼性があります」といった形で、弱みを強みとしてリフレーミングしておくべきでした。
もう一つは、面接後のフォローです。仮に面接中に候補者の回答が不十分だと感じたとしても、面接後に「先ほどの質問について、緊張からBさんは十分に伝えきれなかったようですが、過去のXXプロジェクトでは同様の課題をこう解決した実績があります」と、別途補足する方がはるかに効果的です。
これらの行動こそが、真の意味で「顧客に受け入れてもらう」ための戦略です。今回のケースから得られた本質的な気づきは、以下の言葉に集約されます。
自身が商品をうる目線ではなく、顧客がどのようにしたら商品を受け入れてくれるかの目線で、顧客と話すべきだったと思う
あなたは、自分の「商品」の価値を正しく伝えていますか?
今回の事例は派遣業界に限った話ではありません。自社のサービスを提案する営業、部下をマネジメントする管理職、チームの成果を報告するリーダーなど、誰もが何らかの形で自らの「商品」を他者に提示する立場にあります。
その際、私たちは良かれと思って、その価値を損なうような言動をしていないでしょうか。あなたの仕事は、単に「売る」ことですか?それとも、顧客がその価値を正しく理解し、心から「受け入れてくれる」ように働きかけることですか?
この問いを胸に、日々のコミュニケーションを見直すきっかけとなれば幸いです。
